ギリ準富裕層への道のりと、不安からの解放
長い間、手元にまとまった現金はほとんどありませんでした。しかし、退職金の受け取りや株式市場の追い風が重なったことで、結果的に「ギリ準富裕層」と言われる水準に到達することができました。これは、狙って計画的に資産形成したというよりは、生活の中で少しずつ積み重ねてきたものが、退職を機にまとまって見えたというのが正直なところです。
私には子どもが複数おり、全員が理系の分野で学びました。教育費は長年の家計の大きな負担でしたが、定年退職のタイミングで全員が無事に卒業。借金を抱えることなく教育費を払い終えたことは、心の重荷がひとつ減った瞬間でした。ただ、老後資金を十分に貯める期間がほとんどなかったため、不安は完全には消えず、迷いながらも再雇用制度を利用することにしました。
退職金を手にし、これまで蓄えてきた金融資産を合算してみると、保険の解約返戻金や個人年金の返戻、会社の投資制度による株式、預貯金、そして投資信託の評価益などを合わせて、想像以上の規模になっていました。一時的に準富裕層の目安を超える金額に到達しましたが、その後の市場の変動や生活の大きな支出もあり、今ではその水準を大きく下回っています。それでも、「一度はそこに届いた」という事実は、精神的に大きな支えになっています。
「豊かさ」の自覚がなかった日々
振り返れば、退職金以外の資産は、保険や積立、社内の資産形成制度といった日常の延長線上で積み上げてきたものばかりでした。特に、これらを「資産」として強く意識していたわけではなく、あくまで生活の中でなんとなく積み立てられていたイメージです。教育費は常に綱渡りのような家計管理で、ボーナスでなんとか息継ぎをしながら、借金をせずにやりくりしてきました。
投資に本格的に取り組み始めたのは50代半ばのことです。最初はインデックス型の投資信託に挑戦しましたが、値下がりに耐えきれず途中で売却し、損失を出してしまう苦い経験もしました。その後は小額をコツコツ積み立てるスタイルに変え、2020年代前半の株高や為替変動の追い風を受けて資産が伸びる結果となりました。もちろん、今後も変動があることは承知していますが、この経験を通じて資産形成の実感を得ることができました。
不安から自由へ、そして「天馬空」
一定の資産規模に達したことで、長年抱えていた老後の漠然とした不安は大きく和らぎました。中年期に心を病んだ経験があり、その後はヨガの哲学を実践することで心の安定を保ってきましたが、老後資金の不安だけはどうしても消えず、特に「老後資金2,000万円問題」が話題となっていた頃は、精神的に追い詰められていたかもしれません。
しかし今は、金銭的な心配から解放され、まさに「天馬空」の心境です。自由に空を駆ける天馬のように、残りの人生を前向きに楽しむ力が湧いてきました。予算も守るためではなく、使うために組み立て、「やりたいことは先延ばしにしない」をモットーにしています。健康寿命のカウントダウンが始まっている今だからこそ、残された時間を最大限に生かし、これまで我慢してきたことにも挑戦していくつもりです。
かつての自分には想像もできなかったような、軽やかで満たされた日々が、今ようやく始まったのです。



コメント