その日の朝、私は静かな気持ちでスタートホールに立っていました。
このラウンドは、ただの一日ではありません。昨年11月から続けてきた練習の成果を試す、今期初ラウンドでした。前回の練習で、私はこう言われていました。「7割で振れるかどうかが、本番の分岐点になる」と。
その言葉が、ずっと頭に残っていました。そして今日は、その答えを確かめるためのラウンドでもありました。
目標は100を切ること。そして、いずれはそれを当たり前にすることです。
昨年の平均スコアは110前後で、100を切れたことはまだ一度もありません。
課題はドライバーだった
原因は分かっていました。ドライバーです。右へ大きく曲がることもあれば、左へ引っかけることもある。この一打が、いつもスコアを崩していました。
だからこそ昨年11月から、週に一度、AIを相手に練習を重ねてきました。どうすればこの暴れる一打を抑えられるのか。試行錯誤の末にたどり着いたのが、「いっちにい」とリズムを刻み、7割の力で振るという方法でした。
完璧ではありませんが、極端なミスは減りました。ただ、フェアウェイに収まるほどの安定性には、まだ届いていません。そんな状態で、この日のラウンドを迎えていました。
練習と同じ球が出た
スタートホールでドライバーは、いきなりチョロでした。思わず苦笑いが出ましたが、不思議と焦りはありませんでした。
「いっち、にい」と心の中で刻み、ゆっくり上げて振り切る。それを繰り返していくうちに、ボールは右へ、次は左へと、真っ直ぐとは言えない軌道を描きました。しかし、その球筋に違和感はありませんでした。むしろ、見覚えがあったのです。そのとき、ふと気づきました。
「練習場と、同じだ」
これまで練習とコースは別物だと思っていましたが、この日は違いました。ドライバーは、練習場で打っていた通りに、左右にぶれながら飛んでいきます。良くも悪くも、再現されている。それは、小さな驚きであり、確かな手応えでもありました。
前半は流れに乗っていた
大きく崩れることなく、前半は進んでいきました。気がつけば、スコアは50。100を切るためには、後半49でいい。十分に届く位置でした。
そのとき、ふと「今日は、いけるかもしれない」と思いました。
後半、判断が揺れ始める
後半に入ると、少しずつ何かが変わっていきます。風が強くなり、体に疲れが出てきます。ショットの当たりも、わずかにズレ始めます。
ラフに入ったボール。目の前には木があり、その先にはグリーンが見えていました。前半の自分なら、迷わずフェアウェイに出していたはずです。無理をせず、次につなぐ。その判断ができていました。それでも、そのときの私は思いました。
「いけるかもしれない」
クラブを振り抜きます。結果はダフリで、ボールはほとんど前に進みません。続く一打も同じような状況で、今度はトップして思った場所には届かず、ミスが次のミスを呼びます。気がつけば、一つのホールで2打、3打と増えていました。
その流れの中で、ようやく気づきました。崩れているのはスイングではありません。判断でした。前半は、ミスをしてもそこで止めていました。無理をせず前に出し、次の一打につなげていました。後半は、それができなくなっていたのです。
練習は裏切っていなかった、しかし
あの問いに対する答えは、はっきりしていました。7割で振ることはできていました。しかし、それだけでは足りなかったのです。
合計は107。またしても100には届きませんでした。クラブを片付けながら、なぜ同じように打っているのに結果がここまで変わるのかと考え続けました。そして、もう一つはっきりしていたことがありました。練習してきたことは、間違っていなかったということです。
ドライバーは、練習場での感覚そのままに再現されていました。だからこそ見えてきたのです。問題は技術だけではない、ミスの被害を自分で大きくしてしまっているのだと。
そして、もう一つの現実にも気づきました。100を切るというのは、単に「うまく打てばいい」という話ではありません。例えば、1ホールをボギーで収め続けても、スコアは90です。つまり100を切るということは、「大きなミスをしない状態」を18ホール続けることでもあります。
一度の判断ミスが、すぐにダブルボギーやトリプルボギーになります。それがいくつか重なれば、簡単に100を超えてしまいます。ゴルフをしていない人には想像しづらいかもしれませんが、100を安定して切るというのは、ミスを出さないことではなく、ミスの被害を広げない判断を18ホール続けることなのです。ナイスショットが足りないのではありません。ミスを、その場で止められていないのです。
次のラウンドへの覚悟
次のラウンドに向けて、私は一つの言葉を決めました。
「7割ない」
このショットは、10回中7回成功するだろうか。そう自分に問いかけます。もし自信を持ってYESと言えないなら、打たない。フェアウェイに出す。次につなぐ。それだけです。
帰り道、ふと小さなハンマーで壁を削り続けるあの場面を思い出しました。一振りでは何も変わりませんが、やめなければ確実に前に進みます。
前半50、後半57。その差は7打でした。その7打は、技術の差ではなく、判断の揺れでした。そして同時に、練習は裏切っていなかったのだとも分かりました。次のラウンドでは、もう迷いません。「いっちにい」で打ち、「7割ない」で守る。その一打を、また積み重ねていこうと思います。



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