「人生の終わり」ではなく「通過点」とするために
人生100年時代、老後の人生も長くなっている昨今。自身の老後に関して漠然とした不安を抱えている人も少なくないと思います。まずは、老後の「入り口」でもある“役職定年”の問題とその対策について考えてみました。
人生の後半50年で待ち受ける「さまざまなトラブル」
「定年60歳、人生80年」の常識はもう時代遅れですね。新常識は「定年70歳、人生100年の人も珍しくない」、いや、「働けるまで働く、人生100年は当たり前」が真実だと思います。しかも人生100年とすれば、あと残り50年間もあります。この長丁場を生き抜くためには、年金だけの生活で満足できない方は真剣に対策を考える必要がありますね。
そしてこの人生後半50年では、「熟年離婚」「年収の減少」「年金問題」「健康の問題」「介護問題」……などなど、さまざまなトラブルが起こる可能性も示唆されます。しかし、何歳頃にどんなトラブルに巻き込まれやすいのかを知っておけば、事前に対策を立てることができますね。会社員であれば、定年制度の延長とともにスタートした“役職定年制度”があります。
役職定年によって、年収がどれくらい下がるのか? そのほかにどんな問題があり、どのような対策をしておくといいのか? これらについて解説していきましょう。
55歳役職定年は、昔の定年年齢と深く関係しています。今でこそ定年年齢は65歳に定められていますが、1970年代は55歳定年が一般的でした。これが1980年代に努力義務として定年年齢が60歳に引き上げられ、現在は65歳までの雇用機会の確保が義務となりました。
しかし、会社としては、定年が延長されることにより増える人件費をどうにかして抑えたい。その対応策として生まれたのが役職定年です。
課長職、部長職の方々は、一般的には40代から50代にかけて職務につくことが多く、経営側となる幹部と若手の部下の間にはさまり、成果を上げていく必要があります。年々ハードルが上がる目標数字、言うことを聞かなくなる部下との人間関係と悩みは尽きません。そして、55歳まで何とかやってきたと思ったら、年齢を理由にいきなり役職を解かれて、給与も大幅にカットされるのが役職定年です。
個人としてはなんともやりきれないでしょう。ただ、企業の新陳代謝を考えれば理解できない話ではありません。しかし、企業も会社存続のために変化していかなくてはならない宿命にあるのです。実際、役職定年を制度として取り入れている企業は多く、給与の削減幅は2割減程度が平均的なようです。
ここの冴えない働かないおじさんも、しっかり55歳の誕生日を境にきっちり2割給与が削減されました。当時まだお金の勉強もしていなかったし、子供二人が学生だったのでとても焦りました。
収入減でも仕事は変わらず、働かないおじさんはついていけない。
役職定年後の仕事内容についても、やる気を失わせる原因になっています。人事院の調査によれば、元の仕事と変わらなかった人が5割もいます。つまり、仕事内容にかかわらず、収入だけが大幅に目減りするのです。しかも、これまで仕事をサポートしてくれた部下もいません。1人ですべての仕事を完結させる必要があるのです。みなさんは、郵便を送る際の切手の保管場所や料金がわかりますか? わからない人は要注意です。うかうかしていると「働かない人」扱いされてしまいます。こうした庶務も、これからはみなさん自身が行う可能性もあるのです。私はこの庶務と新しくなった会社のシステムに悩まされました。
庶務の要件は、庶務の女性が毎度繰り返し教えてくれるので、「申し訳ないなあ」と思いながらお願いしていましたが、新しくなった会社のシステムには参りました。毎日使うものだったら何とかなりますが、1か月に1回程度しか使わないものや3か月に1回しか使わないものは、都度若者に聞くのですが、さすがに3回目は聞けなくなってしまいました。
自分としては教えてもらった時はしっかり頭に入った、大丈夫と思うのですが、1か月後再度やろうとすると全く何も覚えていないのです。昔だったら、きっかけがあれば芋づる式に思い出せたのですが、それができないのです。本当に焦ります。そんなことが数回続くので、自分でマニュアルを作りますが、繰り返しやらないと覚えられないし、しばらく操作していないとマニュアルを作ったことすら忘れてしまうのです。本当に重症です。
準備しておけばダメージは減らせる
役職定年によるお金の影響は、非常にわかりやすいところです。年収が2割カットされるということは、毎月の生活費も同じように変えていく必要がありますね。毎月の支出を人生の最高年収時に合わせていると、年収が下がったときについていけません。預貯金やボーナスを切り崩して、毎月の生活費の赤字分を補う生活となってしまいます。
ですが、役職定年は突然の肩たたきではなく、起きる可能性と時期は予測がつきますね。もっと前から収入の8割で家計がまわせるように設計しておけばいいのです。
更に役職定年は健康面でも暗い影を落とします。今まで部下がいて、部長職や課長職を謳歌していた人にとっては、給料カット以上に心への影響は大きいものですね。とくに、新卒で入社して以来、転職をせず1つの会社で過ごした人には、厳しい仕打ちではないでしょうか。会社は、最終的にはわれわれの人生まで保証してくれるわけではないです。会社は会社の都合で動くのです。
逆に「やっと厳しい数字の世界から解放されて、定年後を見据えて毎日が落ち着いて過ごせる!」と発想の転換を考えたほうが健全ですね。私は、知り合いに「役職定年になった」と話した時、その方は「勝ち組の人生ですね」とおっしゃってくださいました。会社で管理職になれたから到達できた結果でしょう?という意味ですね。そういう考え方をしてみようと思いました。
役職定年は、人生の終わりではありません。単なる人生においての通過点です。特別急行から鈍行列車に乗り換えれば、まわりの景色もよく見えるもの。こう考えれば、定年後の充実した生活に向けたよい助走期間になるはずです。
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